Friday Night Plans、安次嶺希和子が生んだ極上のライブ体験 BLUE NOTE PLACE × TuneCore Japanイベント『BLUEW』レポート

コラム・特集
2026.6.18
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6月5日、東京・恵比寿のBLUE NOTE PLACEとTuneCore Japanがコラボレーションしたライブイベント『BLUEW』の第2回目が開催された。 恵比寿の街の一角で、音楽と食が織りなすエレガントな体験を提供しているBLUE NOTE PLACE。本イベントは、この特別なベニューでインディペンデントアーティストの新たな出演機会を創出するべく発足した。第1回は3月に開催され、Som、ZINが出演。続く第2回の今回は、沖縄出身で国内のみならず海外フェスの出演も相次ぐなどグローバルな注目を集めている安次嶺希和子、そしてゲストアーティストとして、R&Bを軸に果敢な実験を重ね、5月29日にニューアルバム『Blue Hour』をリリースしたことも記憶に新しいFriday Night Plansが出演した。

 
ライブ前後、および休憩時間を彩るミュージックセレクターは、東京を拠点に音楽、映像、アートなど多様な表現を横断するクリエイティブチーム・aTTnが担当。肌馴染みの良いシルキーなグッドミュージックが、いつも通りの夜に特別なベールをかけていく。







 

【安次嶺希和子】



19時を迎え、ピアニストのbejaにスポットが当たる。静謐なムードの中で鍵盤が鳴らされると、水面を雨が叩くような、美しくも確かな旋律がBLUE NOTE PLACEの空間に広がっていく。そうしてステージに姿を現した安次嶺希和子の歌声は、何もない場所からふっと生まれて、また無へと帰っていく瞬間までをも感じさせるように滑らかだ。同時にその振動は有機的で、ここが東京の街の中であることを忘れさせるように、海や森といった原初的なイメージを記憶の中から呼び覚ましてくれる。







「しらせ」ではピアノだけではなくビートや多重録音されたコーラスが重なり、その音像にさらなる奥行きが加わっていく。続く「Circus lion」は、流線型をなぞるような英語詞が印象的な一曲。安次嶺はその力強いリズムに身振りを同期させて、見えない何かに手を伸ばし、天井の向こうに目線を飛ばす。ただ歌を届けるというより、ステージ上にもうひとつの世界を作り上げていくようなパフォーマンスだ。曲間に訪れる長い静寂さえ、彼女の表現の一部として機能していた。







歌声に一層の迫力が宿ったのは、未発表曲「感染」。その場の一人ひとりの眼前まで接近するようなエモーショナルな響きに、思わず息を呑んだ。曲が終わり、安次嶺が「ありがとうございます」と一息つくと、客席からは大きな拍手が返される。「今日は金曜日の夜に、ずっと大好きだったFriday Night Plansと対バン、そしてずっと歌ってみたかった場所で歌うことができて嬉しい気持ちでいっぱいです」と語る安次嶺。「いつも言われるんですよ。拍手のタイミングがよくわからないって。すみません」と微笑む姿は、ステージ上での神秘的な佇まいとはギャップのある茶目っ気も感じさせた。







そうしてややリラックスした空気感の中、「忘れじの言の葉」の、まるで童歌のようなノスタルジックな響きと三拍子のリズムが、さらにリスナーの心を解きほぐした。最後に披露されたのは「Snowman」。柔らかな優しさを持ちつつ、同時に我々に揺さぶりをかけてざわめきに似た余韻を残すのが安次嶺らしさなのだろう。高鳴る鼓動のような低音の中で感情や焦燥を露わにしながらも、透明度の高いハイトーンボイスで会場を包み込んだ。







 

【Friday Night Plans】



30分のインターバルを挟み始まったFriday Night Plansのライブは、リリースされたばかりの最新作『Blue Hour』の楽曲を軸にした、ショーケース的な色合いも濃い内容となった。とはいえそれは、単なる完成品のお披露目ではない。繰り広げられたのはこの日、この場ならではの音楽探求であり、その結果、Friday Night Plansの現在地が極上にして未知の音響体験として立ち上がったのだ。

オープニングを飾ったのは前述アルバムの表題曲「blue hour」。弦楽器の和音の残響が引き伸ばされて揺らぐ中で、ボーカリスト・Masumiがそっと囁くように声を重ねていく。幻想的なサウンドスケープは既存のジャンルや文脈に配置されることを拒み、聴き手を彼女の内面へと深く誘い込んでいく。「こんばんは、Friday Night Plansです」と短く挨拶すると、拍手が応答する。誰もが、これからFriday Night Plansが案内するトリップへの期待を隠せないようだった。







 
そのまま「baby baby」へ。幾何学的なベースと、遠くで鳴く風、どこかから聞こえる声。それらがいくつにも重なってリバーブをまぶされると、オーディエンスは洞窟の奥へぐんぐん進んでいくようなスリルを味わう。そして自然に景色が切り替わるように、「wrong time wrong place」に流れ込む。我々は、複雑に織り込まれた音層を解き明かしてもいいし、ただその在り方をじっと浴びてもいい。Friday Night Plansは問いをことさら突きつけるのではなく、ただそこに佇み、リスナーの感覚を開いていく。







 
「Our place」や「Junes」では、視界を覆うような薄いノイズが耳に残る。会話のサンプリング音声も然り、これまで様々な洗練された生演奏が繰り広げられてきたであろうBLUE NOTE PLACEで触れるには、アイロニカルな音楽と言えるかもしれない。しかし、この場所を贅沢に使って、立体的かつ緻密に鳴らされるそれをLo-Fiと表現するのも少し違う気がする。Masumiの紡ぐメロディは、霞みの奥に隠れているからこそ、もっと耳を澄ませたくなる。「The boat.」では、シンセのコードがゆっくりと鳴り、Masumi自身も音に身を沈めるように俯きながら没入していく。







 
最後の曲と告げられて届けられた「see you again」は、シンプルなギターアルペジオと歌を中心にした一曲。拡張され続けた世界が、小さな灯りのような親密さへと収束していく。







 
終演後、Masumiは安次嶺をステージへ招き、二人でフロアへ礼をして『BLUEW』を締め括った。



 


 
BLUE NOTE PLACEの奥深さを、それぞれまったく異なる方法で引き出した安次嶺希和子とFriday Night Plans。インディペンデントアーティストの表現が場所と出会うことで、いかに新しく豊かな体験へと変わり得るかを示す一夜だった。

(photo by Eiji Miyaji)

 
 


「BLUEW」BLUE NOTE PLACE × TuneCore Japan

BLUEW BLUE NOTE PLACE × TuneCore Japan

 
 

この記事の執筆者
サイトウマサヒロ
1995年生まれ、フリーのライター。インタビュー、ライブレポート、コラムなど書きます。