LIL G インタビュー TikTokで話題の楽曲「GAL」のビートも手がける、福岡発の新進気鋭プロデューサー

2022.2.18

LIL G インタビュー

LIL G
福岡県朝倉市杷木町出身、現在23歳のプロデューサー/レコーディングエンジニア。福岡の中央区、親不孝通りにあるBIG UP Studio代表。先日からTikTokで話題になっているOHAYOの楽曲「GAL (feat. Shake Pepper & Yvngboi P)」のビートを手がける他、地元福岡をはじめ数多くのラッパー/アーティストに楽曲を提供している。

IYOW : A series of interviews with featured beat makers / producers / composers
 


 
——キャリアスタートのきっかけ

もともと小学校の頃からLady GaGaなどのエレクトロ感強めのポップスにハマっていて、LMFAOやAviciiなどを聴きはじめました。中1の頃には音楽プロデューサー兼フェスDJになりたいと思い始めて、本格的にそれを目指そうということで音楽コースのある高校に進学して1年間音楽の基礎を学んだんですけど、面白くなくて美容師コースに変更しました(笑)。

それでコースを変更してすぐの話なんですけど、自分の地元が大分県との県境ということもあって大分県日田市の日田サイファーに呼ばれた時があって。面白そうやなと思って参加してみたら、そのサイファーのリーダーが楽曲を制作したいと言い出したんです。その頃はフリービートとかの概念も無くて、「みんな1から作ってるやろ!」って勘違いして自分で曲を作ったのがプロデューサーとしての始まりでした(笑)。ちなみに音楽コースをやめてから音楽性が覚醒したと思います(笑)。

 
——ターニングポイント

21歳の誕生日の時、これからの不安やその時の悩み事に押しつぶされそうになって。それで悩みに悩んで、とにかく冗談抜きで「頑張ろう」っていうことで出した答えが”一人暮らしの家をスタジオに改造する”だったんです。それで、すぐに実行に移してスタジオを作りました(笑)。それがなんとかうまく軌道に乗って、段々と色々な方への楽曲提供やレコーディング、ミキシングなどをさせていただけるようになりました。

さらに大きなターニングポイントとしては、その後クラウドファンディングを実施して、支援者みなさんのおかげで今のBIG UP Studioを福岡の音楽の街、親不孝通りにオープンできたことです。

あと、今回のOhayo、Shake Pepper、Yvngboi Pの「GAL」のバイラルもそうだと思います。ターニングポイントは本当に沢山あります!

 
——最近手がけた主な作品

Ohayo – GAL feat.Yvngboi P, Shake pepper

Baby-B – AIR FORCE 1 feat. Cz TIGER & SWN Cutzwar

Yvngboi P & FreekoyaBoiii – F’s Uppp 1 & 2

Yvngboi P – Count Down

Yvngboi P – A¥¥ A¥¥ A¥¥

TRUE COLOR – PLAY WITH

あと何より自分の楽曲です!

 
——キャリア当初の制作環境

キャリアスタート時はなんせお金がないもんで、iPhoneのGarageBandを酷使して、トラック制作からレコーディング、ミキシングまで全部やってました。正規じゃない使い方をたくさんして本当に世界一使いこなしてたと思います(笑)。ドラムもサンプラーを使って、絶対Garage Bandでは出せない音をぶち出してました!レコーディングも途中までイヤホンについてるマイクでやったり。Beatsのヘッドホンに付属してるマイクが一番音割れがなかったですね(笑)。途中からはiRigにダイナミックマイクを繋いでやるようになりましたけど。ミキシングは試しに試した結果、iPhoneでピッチ補正までできるようになったんで、PCがないと音楽できないと思ってる若い子たちには是非チャレンジしてほしいです(笑)。

キャリアスタート時は仲間のあいだで一人暮らしをしているのが僕しかいなかったんで、僕の家に夜な夜なみんなが溜まって、ほぼプライベートがない状態の中で作ってました。

 
——現在の制作環境

現在は僕自身が代表を務める自分のスタジオ、BIG UP Studioで制作してます。スタジオは親不孝通りの先輩であるSHO-Zさんが代表を務めていらっしゃるBushman Acousticsさんに作っていただきました。白を基調にした内装で、Recのために施された完璧な吸音だったり、ミキシング、マスタリングのための反音材を導入した完璧なレコーディングスタジオにしていただきました。

LIL G インタビュー

 
先ほども言ったように、新しくスタジオを作るにおいてクラウドファンディングを行いまして、その時にご協力いただいた方々には感謝してもしきれないです。30代くらいで1日中スタジオに篭れるような制作環境になったらいいなと思ってたんですけど、それを22歳で実現することができたので、自分でも奇跡だと思っています。スタジオを作ってくれたSHO-Zさんはトラックメイカー、レコーディングエンジニアもやられていて、同業の先輩で機材のおさがりも沢山頂いたので本当に感謝しかないです。もう神様みたいな存在ですね(笑)。

LIL G studio

 
——メインの機材

PCはASUS TUF Gaming A15を使用してます。DAWは”ビートメイクといえばこれ!”、FL Studioです。小学生の頃に大好きだったAvciiや今大好きなビートメイカーとお揃いだし、僕は熱狂的なFL Studio信者です(笑)。

LIL G studio 2
LIL G studio key

 
——モニター環境

ヘッドホンはデザインが気に入っているBeatsのStudio2を長年愛用してます。何よりLMFAOのメンバーが使っていて、それに憧れて買ったという濃ゆい記憶があるので思い入れがあります(笑)。

イヤフォンはAirPods Proです。多くの人が使っているもので自分の音を確認することも大事だと思うので、これも愛用してます。

スピーカーもこれまた王道、YAMAHA HS5です。ホワイトカラーがスタジオの色とマッチしていてお気に入りです。

 
——使用音源

お気に入りの使用音源は3つあって、1つ目はSonic CatのPurity。PluggっていうHip Hopのサブジャンルがあるんですけど、昔からPluggzっていうプロデューサー集団のビートが大好きで、Plugg beatを作るにおいてハードな抜けたビートにしたい時に使用します。

2つ目はSpectrasonicsのKeyscapeです。主に鍵盤音源なんですが、すごく幅広く使えて重宝してます。ちなみに、R&Bが大好きなんですけど、R&Bやソウル、ファンクといえばFenderの名機Rhodesですよね。もうまじ鳥肌立つくらい本物で、エフェクトかけるかけないにせよ大好きです。

3つ目は、これさえあれば大丈夫っていう、同じくSpectrasonicsのOmnisphere 2。本当にそのまま、これさえあれば大丈夫です(笑)。

 
——使用プラグイン

これも沢山あります(笑)。モノラル音源をスレテオ化するのに使えるOzone9 imager、Vocal mixでいわゆるガヤや合いの手に使う自動でパンを振ってくれる無料プラグインのPancake、綺麗なリバーブのValhalla VintageVerb、シンプルにHalfTime、最強のボーカルエフェクター CLA Vocalsなど。まだまだありますが、きりないのでここまでにしておきます(笑)。

 
——ビートメイクのプロセス

先にメロディループ、サンプルを作ります。そしてそこに合うドラムス、一番エロいピッチで808を打ち込みます。Hardな中にsexyなベースが理想です。マスターには何も考えずFL StudioストックプラグインのSoft Clipperだけを入れて、あとは僕のサインでもあるVoice Tagを入れたら終わりです。平均だいたい30分くらいで作ります。

 
——ビートメイクポリシー

どんなにDirtyなサンプルを作ったとしても、ベースラインはエロくを意識してます。色んなジャンルを作るんですけど、その中でのベースラインのエロさはかなり意識してます。あと何より本場アメリカの音が好きなので、綺麗な音割れをすごく意識してます。オープンハイハットと音量を上げすぎた808が被さって「ジュウィーン!」みたいな異常な音が鳴るのが好きです(笑)。

あと複雑すぎるビートは個人的に好みではないので、先にフックの部分を作って、そこからの引き算を意識してます。足し算より引き算ですね。

 
——最も影響を受けたプロデューサー/ビートメイカー

シンプルな中でのテクニック、音作り、音使い、比較的入手しやすい音源を使ったビートメイキングなど、全部を兼ね備えたプロデューサーPi’erre Bourneに一番影響を受けました。彼が手がけたPlayboi Cartiの「Magnolia」をはじめて聴いた時、「何やこのオモチャみたいやけどセクシーなベースラインは…」って、なんとも言い難い衝撃が走ったのを覚えています。なので、Zay808のデータを見つけた時は泣きました(笑)。

 
——影響を受けた楽曲

Playboi Carti – Magnolia Prod.Pi’erre bourne

2コード、フルートの使い方、セクシーなベースライン、チープだが独特なグループのおもちゃみたいなドラムパターン。僕のスタイルはこの曲から始まりました。

 
 
Famous Dex – Geek on a Bitch Remix (feat.Playboi Carti & Polo Boy Shawty)Prod.DJ Flippp

DexterとCartiのバースも好きなんですが、PluggzのビートメイカーのPolo BoyのHook2が極上ですね!ビートメイカーみんな歌える説が浮上してきました!

 
 
Pi’erre Bourne – Marie Curie Prod.Pi’erre Bourne

ゲームのようなシンセ、あいかわらずなドラムパターン、セクシーな808、自身が作成したビートでの制作に心打たれました。ここでビートメイカーみんな歌える説が濃厚になりましたね。この曲は好きすぎて僕自身もビートジャックしました、サンクラにあります(笑)。

 
 
meltycanon – POPSTAR Prod.meltycanon

彼も影響を受けすぎたビートメイカーの1人です。ポップすぎるメロディーの中にある美しさと、聴くのが楽しいドラムパターンはとても影響を受けました。しかも自身の制作したいビートで歌うという、ビートメイカーみんな歌える説が僕の中で確定しました。

 
 
YBN Nahmir – Rubbin Off The Paint Prod.iZak

808のパターンが大好きですね。あとラフで軽快なラップも合います。シンプルなビートで大好きです!

 
 
Diego Money – Jitt Prod.StoopidXool

Pluggzで僕が一番好きなビートメイカーStoopidXoolのいい意味でスッカスカの抜けたビートで、Diegoの気の抜けたゆる〜いラップがめちゃめちゃ合います。宇宙のような上ネタとアタックなしの太い808が大好きです。

 
 
NGeeYL – Sweep Prod.Jetsonmade

不思議な音作りのサンプルとシンプルなハイハットと迫力のあるベーシックなスネア、パンチの効いたエロすぎる808が僕の心と耳を鷲掴みするんです。

 
 
Bryson Tiller – Don’t Prod.Epikh Pro

もう言うことないです。僕自身少し歌えるんですけど、歌のテクニック、発生方法、間の置き方、ミキシング全て影響を受けたのは彼ですね。パワーコードの上ネタもパワーコードと思えないほどの分厚さで最高です。

 
 
FKJ & Masego – Tadow

この2人は僕にとっては音楽を全て知った上で遊んでいる神のような存在です。もう全てがチートですね。

 
 
Brent Faiyaz – Fuck The World Prod.Dpat,Brent Faiyaz,L.3.G.I.O.N.

この曲に出会った時は「それありなんやー…」みたいな衝撃でした。なにもいうことないです。聴いてみてください。

 
——My favorite works / 自分の作品からのお気に入り

Ohayo – Gal feat.Yvngboi P & Shake Pepper
https://linkco.re/333DnUZy

言うまでもなくお気に入りです(笑)。この曲には結構面白い緩いストーリーがあるんですが、それは自分の心に秘めておきます。もし僕をクラブで見かけたら、その時にでもお話しします!(笑)

 
 
Yvngboi P – Count Down
https://linkco.re/pvH1BH2a

北九州はMelo sodaの主宰Gerardparman君とノリで作ったUK Drillビートを、当時UK Drillビートを探していたPに渡したら秒でプリプロが送られてきて誕生した曲です。YouTubeでバイラルが初めてだったので思い入れがあります。

 
 
Baby-B – AIR FORCE 1 feat.Cz TIGER & SWN Cutzwar
https://linkco.re/tVcgS8yS

福岡親不孝通りで活動している先輩Baby-B君の作品で、同じく唐津、福岡親不孝通りで活動中の先輩L-BLANTSのSWN Catzwar君と竜巻一家のCz Tigerさんをfeatした作品です。日本のtrapのパイオニアと仕事できたのはめちゃくちゃいい経験になりました、最高です!MVもDoggy Filmsさんで公開中です!

 
 
Yvngboi P – A¥¥ A¥¥ A¥¥
https://linkco.re/QhDbC2Xu

緩いノリでPに渡してできた曲です。大阪が拠点の浪 花 映 像さんからMVを公開中です!

 
 
LIL G – Unnecesssry

僕自身のビートで僕が歌ってて、初のMVを公開した作品です。若い頃にあった色々なことを喋ってます。軽快に僕のライフスタイルを与えたので気に入ってます!

 
 
Shake Pepper – クセになる feat.LIL G
https://linkco.re/rtuF576U

この曲はミキシングとマスタリング、そして僕自身が歌でfeatした作品です。Shake Pepperとは保育所からの幼馴染で腐れ縁ですね(笑)。あいつがこの曲を持ってきた時は“幼馴染ながらセンスあるわ”って、陰ながら衝撃を受けました!

 
 
LIL G – I wanna be with u
https://linkco.re/T05DEfZV

2〜3年前に最初から最後までiOSのGarageBandで制作したPop funkになってます。トラック数を限界以上に使用したので、後のことを考えつつトラック結合を繰り返し、試行錯誤して作った自信作です。

 
 
TRUE COLOR – PLAY WITH

僕自身が所属しているCrew、TRUE COLORの作品です。メンバー全員が軽快なラップをして、何より僕が作ったトラックが自信あります。

 
 
LIL G × Loner Baby – FRIENDS
https://linkco.re/mfY1H1du

僕が作ったビートで僕のビジネスパートナーのLoner Babyとfeatした曲です。日本ではあまりないやり過ぎたベビーボイスラップでの作品で要チェックです。

 
 
Yvngboi P – TRAP HOUSE feat.Kenayeboi
https://linkco.re/hua5Fg0z

最近制作した作品です。PとKenay君の相性も最高でした!高校の頃からファンだったKenay君と曲を作れたのは一つ目標が叶った瞬間です。

 
——今後の展望

僕は今20代前半にして自分で本格的なスタジオを持つという夢のような経験をしています。青い部分もまだ沢山あるかもしれませんが、これからも多くの方々の作品を担当させていただきながら自分自身も成長し、縁の下の力持ちとしてアーティストのみなさんや音楽シーンを支えていきたいと思っています。今後もたくさんの方々と一緒に仕事をさせていただけたら幸いです。

そして、引き続きYvngboi PやFreekoyaBoiiiをはじめとした僕の仲間たちの動きにもぜひ注目してもらいたいです。また、僕自身もプロデューサーとしてだけではなくシンガーとして楽曲を制作して作品を出すので楽しみにしてもらえたらと思います。

あと、僕のスタジオがある店舗「BIG UP」(https://www.instagram.com/bigup__fukuoka/)には、Black Musicコンセプトのミュージックバーやヘアーサロンもあるので、興味を持たれた方はそちらにもぜひ遊びにきてください!レコーディングの待ち時間に特殊ヘアーをしたり、お酒を飲んで楽しむこともできますよ。

 
——メッセージ

2022年は世界の音楽シーンにおいてBillbordの#1を確実に獲るつもりなので、ここに表明しておきます!

長くなりましたが、これからもアップカミングなプロデューサー・LIL Gに注目していただけたら嬉しいです!

 

LIL G
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この記事の執筆者

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