【Who’s NXT】ASAHI |「音楽活動は僕たちにとって日常」予定調和は“どうでもいい” ― 何にもとらわれず音楽を表現し続ける大阪発5ピースバンド

2019.11.1


ASAHI インタビュー

大阪発の5ピースバンド ASAHI。幅広い音楽活動のスキル/キャリアを持つメンバーが集まり奏でられるそのサウンドは、バンド名が表す通りあたたかく眩しい日を浴びるように心地よく、ポジティブなバイブスに満ちあふれている。「好きなことを好きなようにやっているだけ」とリーダーのShouhei.Yが語るように、あくまでマイペースに自分たちの音楽を表現するASAHIに話を聞いた。

Who’s NXT : A series of interviews with featured artists


ASAHI

maki (Vo)
Shouhei.Y (Gt)
Ike-chan (Gt)
Sam (Ba)
Rikiya (Dr)

2018年大阪にて個々に活動するメンバーが集まり結成。
makiのメロウなボーカルとラップスタイルに幅広いジャンルを織り交ぜた楽器陣によるバンドサウンドをミックスさせ音楽が持つ溢れる陽のパワーと今までにないニュースタンダードを追求するバンド。

 
——最初に、みなさんそれぞれが音楽に興味を持ったきっかけを教えてください。

maki : きっかけは、お父さんが真っ白なCDを渡してきて「これ聴いて」って言った時。それがエイジアエンジニアの『あぁ 素晴ら四季 日々』ってアルバムでした。誰が歌ってるのかも、曲名さえも分からなかったのに、コンポから流れてくる音楽は、当時の僕を主人公にしてくれました。ほんとに。だから僕と同じように、僕が作った曲をどこかの誰かがいろんな形で聴いてくれて主人公になってもらえたら、そしてまた他の誰かに手渡ししたりして、そうやって広がっていったらいいなって思って音楽を始めました。

Shouhei.Y : 中学生の時にRage Against the Machineの1stで目覚めました。

Ike-chan : 家に父親のギターが有り、たまに弾いている所を見ていたのと、Guns N’ Rosesのライブ映像を見て、ハードロックへと誘われウェルカムトゥザ音楽しました。

Sam : 中学生の時に姉が車でかけていたGOING STEADY、Hi-STANDARDなどの青春パンクやメロコアで音楽に興味を持ち、高校で周りの友人に誘われてベースを始めました。その頃はメロコア、ハードロックに傾倒していたんですけど、ベースを弾き続けていくにつれ様々な音楽に興味を持つようになりました。

Rikiya : 小学校6年生の時に友達とバンドをやることになって、音楽雑誌や深夜の音楽番組やインターネットで色んな音楽を掘りまくって、中学生になって吹奏楽部入って見よう見まねでベニーグッドマンの「sing,sing,sing」で初めてドラムを叩いたのがきっかけで、今もやってることは当時とさして変わってないです。

 
——ASAHIはどのような経緯で結成されたのですか?

Shouhei.Y : ASAHIは元々インストジャムバンドとしてはじまりました。自分が発起人で、高校の後輩であるIke-chan、専門学校の同期であるRikiyaの3人でマイペースに活動をしていました。あるライブの時、別のアーティストを見に来ていたSAMと偶然出会い、Rikiyaの地元の先輩である事が判明し意気投合すると、その後共通の知り合いであるシンガーソングライターの方のバックバンドとして何回か一緒に演奏したのをキッカケにASAHIに加入するに至ります。

4人になってまもなく同じシンガーソングライターの方に「ラップできる面白い子いるんやけど、どう?」と紹介されて、当時ソロで活動していたmakiと出会いました。楽器陣のジャムセッションにフリースタイルでいい感じにラップを乗せてくれたのと、デモをいっぱい作ってるってのを聞いて「じゃバンド加入で」と即決して、音楽性を試行錯誤させた末、現在に至ります。そのシンガーソングライターの方のお陰で今のASAHIがあると言っても過言ではないです。

 
——現在どういった地域やシーンで活動していますか?

Shouhei.Y : 大阪を中心に、ライブハウスやクラブなどでライブしています。ラップをやっているバンド、ということでシーンは様々です。

 
——最新作とその聴きどころをご紹介ください。

Shouhei.Y : 9月にストリーミング限定で「DOUDEMOII」というシングルをリリースしました。リズムセクションを意識してトラック制作を開始し、ビート感は無くして、適度に「間」を持たせ、そのビートが作る空間に溶け込むように各楽器の音色を適材適所に詰め込んだ感じです。制作時に『ストレンジャーシングス』を観ていた影響で、デジタル系サウンドのキーボードと浮遊感のあるギターを入れたり、ドラムとベースも打ち込み風のフレーズを生音でレコーディングしたりして、耳をすませば生っぽいサウンドにうまいことデジタルなサウンドが溶け込んでいて、現代風な中に80sっぽさが出ているのが聴きどころです。


ASAHI インタビュー

「DOUDEMOII」 各配信ストア : https://linkco.re/09ahDEfP

 
——その他に、ASAHIを知る上でオススメの楽曲をあげるならば?

Shouhei.Y : 今年4月に発売した6曲入りのミニアルバム(EP)『インスタントプロ』を聴いて頂ければなと。「即席感」「日常」をテーマに制作をおこなったので、このタイトルになりました。シーンを選ばず、通勤通学、ドライブ、家でゆっくりしている時、そういう何でもない日常の一部に溶け込む曲になるように敢えて目立たせたり際立たせるアレンジをせず、でも5歳の子供が口ずさめるぐらいキャッチーに仕上げたことで、全体を通して聴き飽きたり聴き疲れをしない作品に仕上がったと思います。

インスタントラーメン、ファーストフードやファストファッション、コンビニエンスストアみたいに、聴いてくれる人にとって気負わない、身近な存在でありたいという思いと、大仰に構える「アーティスト様」へのアンチテーゼでもあるし、”これだけ良い曲、僕らバンバン作れますよ”というアピールでもあるし、「インスタント」という言葉に「プロ」とつけると、凄そうで凄くない、アマチュア以上プロ未満なニュアンスが今の僕らを的確に表現しているようで言い得て妙だなと。まぁこれらは全部後づけで、本当は単に語感が面白かったってだけでつけたんですけどね(笑)。捨て曲無し。6曲合計24分。カップヌードル8食分。1枚1,800円。カップヌードル9食分。『インスタントプロ』、各ストリーミングサービスでも配信しています。是非聴いてみてください。


ASAHI インタビュー

EP『インスタントプロ』 各配信ストア : https://linkco.re/b2PQqysB

 
——楽曲の制作はどのようにされていますか?

Shouhei.Y : リーダーの自分が主に作曲を行っていて、DAWでベースとなるトラックを作って、makiがそのトラックに僕の家で歌入れをして、ある程度カタチにしてからスタジオで全員でアレンジを行い完成させるトップダウン方式が主流です。ジャムセッションしたりアイデアを出し合ったりして0から曲を作る場合もあります。そうして出来上った楽曲を、何でも言い合える信頼の置けるエンジニアの方にレコーディングとミキシングを頼み、1つの作品に仕上げています。

 
——まだASAHIを知らない人に、その特徴を伝えるなら?

Shouhei.Y : 思わず体が動いてしまうノリの良さと、一聴すると耳から離れない中毒性のあるキャッチーなサウンド、日常を独自の目線で紡いで歌い上げるmakiのリリック。ラフで緻密な、ポップさの中にも人とは違う個性、「ASAHIらしさ」という言語化出来ない抽象概念を、メンバー各々の「人間」というフィルターを通して、一つの偶像にアウトプットしている様なバンドです。

 
——ASAHIはどういったアーティスに影響を受けていますか?

Shouhei.Y : The artists that can sympathize with are all artists who make good works. 日本語に訳すと、“カート・コバーンとダフトパンクを尊敬しています。何故なら、彼らはとても革新的だからだ。” になります。

 
——楽曲でいうと、メンバーみなさんそれぞれどういった曲に影響を受けましたか?

maki : チャットモンチーの「風吹けば恋」が今の僕を作ってくれた曲ですね!あとチャットモンチーの「風吹けば恋」。

 
Shouhei.Y :

RIP SLYME – 黄昏サラウンド

このバンドを組んですぐの頃、友達と入った居酒屋で飲んでたら突然この曲がBGMで流れてきたんです。バンドの方向性を決めかねてた時で、この曲の懐かしさと共に道が開いた感じがして大変お世話になった曲です。

Ovall – Feel the light in your eyes

関口シンゴさんのギターが好きなのと、楽曲アレンジなどめちゃくちゃ勉強になりました。あとはこのバンドのグルーヴですね。グルーヴってなんやねんってなったらこの曲の入ったアルバムを聴いてました。

 
Ike-chan :

John Mayer – Belief

この曲は、それまでハードロック、メタルしか興味が無かった僕が、色々な音楽を聴くようになるきっかけを与えてくれた曲です。

東京事変 – 修羅場

東京事変を知るきっかけになった曲です。この曲に限らずどの曲もかっこいい演奏と聴きやすさ、印象的なメロ、それぞれのメンバーが醸し出す雰囲気など、どの要素も最高だと思うので、東京事変のクオリティが僕の目標です。

 
Sam :

Vanilla Fudge – You Keep Me Hangin’ On

ベースのイメージを覆し幅まで広げてくれた曲。ルート中心のリズムやメロを弾かず、こんな無茶苦茶に弾いててもグルーヴは成り立つんだと教えてくれました。リズム隊の熱量とエモさがすごい。このライブ感のある絡みは目標。

Bootsy Collins – I’d Rather Be with You

裏拍という概念を教えてくれた人。ChicのBernard Edwardsにもだが、音価やグルーヴというものについて深く考えさせられた。この曲もグルーヴ感、エモーショナルさがすごくて、精神的にもとても影響を受けた。ライブ映像でもだいたい後半は感情が高まり過ぎるのかエフェクター踏み過ぎて訳が分からなくなっているとこが良い。

 
Rikiya :

K Á R Y Y N – EVER

2019年の僕の推しであり現時点での表現の理想形。現代的とも原始的とも取れる音の表現は感覚や本能を剥き出しとしながらも自然体だし美しく芸術的で、憂いを帯びた複雑で深い音像の中に温かな人間らしさを感じ取ることができて、特にこの曲はそういった要素が顕著に表れていると思う。日々色んなアーティストに影響されるけど、ずっと自分の先端に留まっているという点で選びました。

Heavenstamp – Stand by You

仲の良かった先輩とこの曲をカバーしたことがあった。その先輩はもうこの世に居なくて、この曲を聴く度にその人のことを思い出す。その出来事も歌詞もバンド名さえも僕の人生に深く影響していて、僕が音楽をやり続ける意義であり理由でもある。偶然2回程ライブを観させてもらう機会があり、この曲を生で聴いて本当に感動した。そんな曲を、ライブを、自分も作って演奏できたら良いなと思った。

 
——音楽活動にあたって、何か特に意識していることはありますか?

Shouhei.Y : 音楽活動は、僕たちにとって日常であって、自然なことです。ただの音楽好きの集まりなので、これと言った主義主張は特にありません。好きなことを好きなようにやっているだけです。世界情勢など知ったことかという利己主義、悦楽主義な考えかもしれませんが、その日常がこれからもずっと続いていくように無為を通すというのがある意味スタンスではないかと思います。

 
——現状の音楽を取り巻く環境やシーンについて何か思うことはありますか?

Shouhei.Y : 僕たちが10代だった頃でさえ情報化社会の波の中でしたが、より音楽を広く深く容易に手に取れる時代になったのは素直に嬉しい。ただそのスピーディーさに、手軽さに、音楽の在り方、アーティストの在り方の最適解があやふやになっていると思う。逆に言えば、それだけ可能性を広げてもらえたとも言えるので、音楽に関わる全ての人が、より人生を楽しめる可能性の先にある未来に、朝日が差し込まんことを願うばかりです。

 
——今後の活動の展望や予定は?

Shouhei.Y : 何もありません。予定調和の想定内のキーネーシス的な活動なんて無意味でナンセンスだし、どうなるか想像出来ない未来にワクワクして今ある一つ一つの活動に一生懸命取り組む方がずっと良いと思うのです。

 
——最後にメッセージをお願いします。

Shouhei.Y : どういう経緯か、ASAHIを知ってくれた方、曲を聴いてくれた方、ライブに足を運んでくれた方、CDを買ってくれた方、ASAHIを宣伝してくれた方、ライブに誘ってくれた方、全ての方々に感謝しています。これからも頑張っていくのでよろしくお願いします。

 

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