Paleduskインタビュー そのサウンドは “真新しい” 衝撃 ― New EP『HAPPY TALK』リリース

2020.5.17


【Interview】Paledusk | New EP『HAPPY TALK』リリース

福岡発、躍進を続けるバンドPaleduskが先日New EP『HAPPY TALK』を発表した。リリース直後からその衝撃のサウンドは話題を呼び、Apple Musicのメタルジャンルのアルバムチャートでは長らくトップをキープしていたBABYMETALを抑え1位に。インディペンデントにも関わらずKNOTFEST JAPANにも出演決定するなど、その活動スケールと勢いは日々増している。メタルやロックリスナーはもちろん、その独特の存在感とスタンスはハードコアやヒップホップなどジャンルを越えたカルチャーからも支持を得ている。昨今の状況の中でもタフに自分たちの信じる音楽を届け続けるPaleduskに話を聞いた。

Paledusk : Daisuke(Gt.), Tsubasa(Gt.), Seiya(Dr.), Kazuki(Ba.), Kaito(Vo.) [L to R]

 
——まず、今回このタイミングで5th EPとなる『HAPPY TALK』をリリースすることとなった経緯を教えてください。

Kaito : 自分たちにとって2019年はこれまでの環境を良い意味でガラッと変える一年でした。そしてその大きな要因は、2019年4月にリリースした『VARIED』というシングルの収録曲「NO!」のMVを出したことだと思います。

「たった一曲の楽曲ですら、自分たちのことを人に知ってもらうための大きな武器になる」

そのことを知れました。だからこそコンスタントに、でも前作よりも、これまで出してきた全ての作品よりも最高な曲達を詰め込んで4曲入りのEPを出したいと考えました。そして納得いく作品になったタイミングが来たので、今作をこのタイミングでリリースしました。

——『HAPPY TALK』は再録の「LIGHTS」以外の3曲は2分台の尺だったり、よりオリジナリティのあるPaleduskサウンドが際立っている作品だと感じました。Djentやメタルコアへのリスペクトも感じさせながら、ジャンルにとらわれず、ある意味ひとつ上のステージにあがったというか。例えば、「AO」と「HAPPY TALK」ではシンプルさとプログレッシブさが絶妙のバランスで保たれていながら、ヒップホップやビートのアプローチもセンスよく散りばめられていて、Paleduskにしか作り得ないサウンドに仕上がっているなと。それで、改めて1曲ずつ解説いただければと思います。まず、1曲目の「AO」について、同期、エレクトロな要素を帯びながら終盤はFear Factoryをも思わせるスペーシーなサウンドに仕上がっていますね。

Daisuke : 「AO」は2分弱の間に4回テンポチェンジしている曲なんですが、このアイデアはよく色んなアーティストが新しいアルバム等を出す時にコマーシャルとして収録曲の美味しいところを数秒ずつ聴かせるいわゆるTeserを見て、「Teaserの様な構成で一曲書こう」と思って作曲しました。その中でリスナーの予想する曲の展開の少し斜め上な方向に行くようにしました。普段こういうジャンルの焼き増しのアレンジに飽きた人達も驚いてくれる新しいもので、それでいてノリやすい曲にしようとこだわりました。同期はそれこそ普段このジャンルの人達がやらない組み合わせをして、自分なりのヘビーなサウンドを作ろうと思って形にしました。

——「AO」では、リリックにおいてはどういったことを歌われていますか?

Kaito : 歌詞のことはあまり深くは語ってこなかったですし、何より自分の歌詞は人それぞれの捉え方をしてほしいのですが、少しだけ話すとすればこの曲は「決断を自分ですることが自由につながる」と言うことをテーマに書いてます。

——ちなみに映像ディレクターでVision of FatimaのBa.でもあるKato氏が、先ほどの「NO!」をはじめ「9 SMILES」、「PALE HORSE」に続いて今回も「AO」のMVを手がけていますが、「AO」をMV曲に選んだのはどうしてですか?

Kaito : 一番彼のディレクションや、アイデアが活きてくる楽曲だと思ったし、なにより人がびっくりするような展開がたくさんあるのに曲自体が短いのとか全部が面白い気がして、直感で選びました(笑)。

——「AO」のMVについての思い入れや制作のエピソードについて教えてください。

Kaito : 僕らは3月にこれまでバンドを結成してからの5年の間共に活動してきた”Masa”というスタッフを亡くしています。彼はPaleduskの初期の遠征からずっとついてきてくれて、たくさんの距離を運転したり、いろんな景色を一緒に見てきました。そんな彼が僕らを長距離ドライブして連れて行ってくれた最後の映像です。僕たちにとっては、そういう意味もあって本当に大切な映像になってます。

——バンドにとって非常に大切な作品なんですね。改めてお悔やみ申し上げます。

それで撮影中のエピソードとしては、撮影チームの中で初めて僕らのMV撮影に携わってくれたカメラマンの方がいたのですが、その人がずっと撮影しながらまあまあなボリュームで「かっけぇー!かっけぇー!」ってめっちゃテンション上がりながら撮影してくれたのがかなり印象的で覚えています(笑)。

——その光景はかなりファニーですね(笑)。次に、2曲目の「HAPPY TALK」は、前半はトラップメタルとも言えるサウンドになっていますね。

Daisuke : この曲はイントロをまずビートにしようと思って書きました。そしてこの曲は特にノリやすくて踊れる曲にしようって意識してて、特にドラムフレーズの展開はスネアとキックの位置にこだわって、そこに絡みつくようなギター、ベースを作りました。この曲はPaleduskを昔から聴いている人には気付くパートや途中でボサノバ調のフレーズを入れたりして、常にリスナーを振り回す展開にしました。ライブではさらに面白いことが出来る仕掛けを付けているので、是非沢山聴いてライブでも聴きに来て欲しい一曲です。

Kaito : リリックは、この曲こそ人それぞれの捉え方をしてもらいたいのですが、「納得のいかないことへのヘイト」と、その反面「自分たちの理解者への愛」を自分なりに書いてます。

——続く3曲目の「Q2」では、一転して明るめのコードで、スケール感ある疾走チューンになっていますね。Daisukeさんが以前好きだと言っていたSUM 41にも通ずるような。

Daisuke : この曲は今回作曲した3曲の中で個人的に1番好きな曲です。おっしゃる通りSUM 41大好きなのもありますし、メジャーキーの曲をシャウトメインのバンドがほとんど誰も手を付けない所に着目して作曲しました。そして先ほど話にもでたうちの家族同様のスタッフのMasaに宛てて書きました。ギターやシンガロングのメロディは全部その場で5分くらいで作ったんですけど、自分の中でとてもしっくり来たお気に入りの1曲です。Paleduskの名前の通り、淡い夕暮れを連想させるどこか切ないけど懐かしさや温かさを感じる曲やサウンドにしようと思って書きました。

Kaito : この曲のリリックは先日亡くなったスタッフのMasaへ向けて書いてます。歌詞を読んでもらえば、これまでのPaleduskの曲名が出てきたり、そう言う面白い仕掛けもあるので楽しんでほしいです。Masaに向けて書いてはいますが、自分をはじめとする、大切な人がいるすべての人に読んでほしい歌詞になってます。自分は基本的にムカつくことやヘイトをきっかけにリリックを作るのですが、今回は初めてのアプローチでストレートな気持ちを書いてるので、ぜひCDを手に取って読んで欲しいです。

——そして最後に今回のEPを締めくくる「LIGHTS」は、4th EP『BLUE ROSE』の最後に収録されていたと思うのですが、改めて再録されたのはどうしてだったのでしょうか?

Kaito : 「LIGHTS」はリリース以降、一度もライブでセットリストから外したことはないPaleduskのある種アンセムであると言っても過言ではありません。そして、自分たちはこのEP『HAPPY TALK』に収録される新曲達のことを考えたときに、このEPは絶対にこれまでPaleduskを知らなかった人、響かなかった人たちにも絶対に届くと確信しました。たくさんの人が聴いてくれる、本当に心からそう感じました。だからこそ、Paleduskにとっても大切な曲である「LIGHTS」をこのタイミングで再録しようと思いました。あとはシンプルに、バンドとしてのサウンドの進化や、自分のシャウトの進化も感じてもらえると思って入れました(笑)。

——今回『HAPPY TALK』というEP全体を通したテーマ、あるいは伝えたかったことはありましたか?

Kaito : これはシンプルで、サウンド、リリックどちらの面においても”真新しさ”です。人が触れたことなかったり、びっくりするものをとにかく作ったり、ライブで見せたいっていうのがバンドの常にある信条です。


【Interview】Paledusk | New EP『HAPPY TALK』リリース

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——最近メンバーのみなさんはどんな音楽を聴いていますか?

Kaito : 多くなりすぎそうなので、各自国内3アーティスト、海外3アーティスト以内でいきます(笑)。自分は、最近国内だとAge Factory、yonawo、Kroi、海外だとTyler, The Creator、END、Pouyaをよく聴きます。

Daisuke : 同じく自分も3つずつあげます(笑)。最近よく聴く国内のアーティストはMIYAVI、KM、週末CITY PLAY BOYZで、海外はThundercat、フランク・オーシャン、Trophy Eyesを聴きます。

Tsubasa : 国内ではamazarashi、Mili。国外だとHolding Absence、YUNGBLUD、Speak Low If You Speak Loveを最近は好んで聴いてます。

Kazuki : 最近は日本国内だと、おとぼけビ~バ~、中村佳穂、緑黄色社会。海外だと、BROCKHAMPTON、nothing,nowhere.、SeeYouSpaceCowboyをよく聴きます。

Seiya : 自分は日本のアーティストはSurvive Said The Prophet、Suchmos、King Gnu。海外のアーティストはHellions、While She Sleeps、Strange Bonesを最近聴いています。

——みなさん多種多様な音楽を聴かれていますね。活動のスタイルにおいては、現在Paleduskはインディペンデントになりますか?

Kaito : 現在は事務所やレーベル等には一切属してないです。完全なるDIYです(笑)。音楽制作はもちろん、レコーディング、ブッキング、物販の製作や発注、移動、とにかく何から何まで自分たちでやってます。ただもちろんそれが自分たちの武器であり、誇りではあるのですが、素晴らしい方々と仕事がもしできる日が来たら幸せだなとはもちろん思ってます(笑)。

——福岡を拠点にされていますが、地方で活動するメリット、デメリット、それぞれなにか感じますか?

Kaito : 福岡にはやはり東京のようにたくさんのバンドがいるわけではないので、知られやすいというのはメリットだと思います。デメリットはもちろん言わずもがな、移動距離、時間がバカにならないことが最大のデメリットだと思います。東京に住んでいれば電車で行けるライブハウスに福岡からだと1,000キロの距離をかけて行くので。ただこれはデメリットであることはもちろんですが、一本一本のライブにかける気持ちは負けない自信もついたので、一概にデメリットとも言い切れないかも知れません(笑)。

ただ今後どこに住んで、どこを拠点にしても、どこの国でライブをしても、「福岡のPaledusk」であることは変わらないし、誇りに思います。

——また福岡から海外への活動も進められる中で、先日、英BBCの番組でDaniel Philip Carterがホストを務める「Radio1RockShow」に冒頭の『VARIED』収録の「NO!」がオンエアされていましたね。

Kaito : アプローチを自分たちではしていないのですが、自分の尊敬するある人から突然放送の日に「今夜『NO!』がBBCで流れるって!」って教えてもらいました。Daniel Philip Carterと彼は知り合いで、”面白いバンドいないの?”って聞かれて僕らのことを教えたら流してくれたみたいです。頭が上がらないです(笑)。

——CrossfaithやCrystal Lake、coldrainなど、今や国内と海外の分け隔てなく普通に活動して受け入れられている中で、今後Paleduskは海外へのアプローチはどういう方向性を考えていますか?

Kaito : これは国内外問わずPaleduskのスタイルとして、音楽も見た目も他のバンド、アーティストにないものを作っていくことを大切にしています。そうすれば自ずと”日本のバンドだから”、とか、”海外のバンドだから”、とかそういう壁はどんな時もなくなるだろうし、それをCrystal Lake、Crossfaith、coldrainをはじめとする最高の先輩達が証明してくれてるので、自分たちもこのまま突き進みます。

——最後に、延期になったとはいえKNOTFEST JAPANなど大きいフェスへの出演も控えている中、世の中的には未だ油断のならない状況が続いていますが、そういった状況においてもこうして新譜をリリースするなどタフに活動しているPaleduskが今感じていること、考えていることを教えてください。

Kaito : とにかく今は耐えるだけの時です。そしてそれが一番の楽しい時間を早く取り戻すための近道です。どんな状況でもPaleduskは素晴らしいアートを作りつづけるし、フェスだってツアーだって時が来れば出続けるし、やり続けます。だからこそ今はみんなで助けあって、自分の本当に好きな音楽を聴いてほしいです。そしてみんなにとってのそういう音楽がPaleduskであればこの上ない幸せです。また会える日を楽しみにしてます!

Daisuke : 今この時こそお互いの思いやりが僕達の望む平穏を取り戻す一番の手段だと思います。生活だったり色々な不安で心が弱くなってくると思うけど、どうか好きな音楽を聴いたり、新しい事に挑戦などして前向きに明るく過ごして欲しいと願っています。この状況が終わった頃に更に良いスタートを切れる様Paledusk一同も今を過ごして、みんなの心が豊かになれる音楽を届け続けます。お互い頑張りましょう!必ず生きて会いましょう。

Tsubasa : ライブが出来ず、唇を噛むような時間を過ごさなきゃいけない日々ですが、この期間を少しでもポジティブに捉えてもらえるような言葉を綴るなら、タメにタメた分「いざライブだ!」ってなったときの楽しさは凄まじいものだと思います。それは僕らにとっては勿論のこと、リスナーの皆さんにとってもそうだと信じてます。僕らの最新作『HAPPY TALK』も刺激的な作品になっているので、沢山聴き込んで、沢山の”楽しみ”をチャージして、みんなでまたライブハウスでドカンとやりましょう!

Kazuki : 今は辛抱して何事も備え、蓄える時だと思います。その分楽しみも大きな物になります。1日も早く事態が収束し、楽しい日常になる事を祈っています。そして、また変わらずライブハウスで、音楽で遊べる日を楽しみにしてます!

Seiya : このような状況になる前、音楽を求めてライブハウスや会場に足を運んでくれていた方々にとっても今はとても遣るせない状況だと思います。ですが最近SNSで目にするのはネガティブな発信ではなく、今のこの大変な状況をみんなで力を合わせて乗り越えていこうという良い発信をたくさん目にしますし、僕達Paleduskもみんなそう思っています。今のこの大変な状況もみんなで手を取り合って乗り越えた先はきっと楽しい時間が沢山待っていると思います。また音楽でみんなと楽しい時間を沢山作れる時を楽しみにしています!

 

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