Rui Fujishiro インタビュー 「映画のワンシーンのような曲を沢山作りたい」Lo-Fiからピアノインストまで、情感溢れる優美なサウンドを奏でる新進気鋭の音楽家

2020.6.12


Rui Fujishiro インタビュー 「映画のワンシーンのような曲を沢山作りたい」【IYOW 】

Rui Fujishiro

幼少期からピアノをはじめ、ヴァイオリンやパーカッションなど様々な楽器を経験し、音楽大学を卒業。現在は作詞/作曲、CM音楽、ナレーションなど幅広く活動し、最近ではソニーミュージックが発表した話題の新プラットフォーム「Tokyo LosT Tracks -サクラチル-」へも参加。今年3月にリリースした「Home」は海外を中心に多数のプレイリストへ入るなど注目を集めている新進気鋭のアーティストである。

IYOW : A series of interviews with featured beat makers / producers / composers


——キャリアスタートのきっかけ

元々、ササクレクトには作家として所属させて頂いており、裏方のお仕事をさせて頂く事が多かったのですが、色々な事をさせて頂くうちに、アーティストとしての活動提案を頂き、そこからRui Fujishiro名義でのプロジェクトがスタートしました。

 
——ターニングポイント

幼い頃から中学生までピアノを習っていたのですが、とにかく譜面を読むことが苦手でした。酷い時は音符が何かの暗号にしか思えなかったり。自分の手で自分だけのメロディを生み出すのが楽しくて、楽譜にきちんと向き合わなかった結果、発表会の最中に 作り出したフレーズを加えて弾いてしまったり。それでも、その部分を褒めて伸ばしてくれた当時の先生には感謝でいっぱいです。

その頃から音大に行きたかったので、楽典や理論の勉強はしましたが、楽譜への苦手意識は今でも変わりません。大学ではDTMに出会い、自分の弾いたメロディがそのまま録音できたり、効果を加えられたり、大好きな鍵盤1つで、様々な楽器に変換して音を出せる事に魅力を感じました。それをきっかけに、曲作りや音遊びの幅が広がり、溜め込んだ曲をササクレクトに送らせて頂いた事がきっかけで、今に至ります。どれが欠けていても今の自分は居ませんが、大学時代の経験がかなり糧になっています。

 
——最新作について

6月3日に『Sentimental Days』というピアノインストアルバムをデジタルリリースさせて頂きました。感傷的になってしまう時や、ひとり思いふける時に頭に浮かぶ情景を、そのまま素直に音にしました。中でも「Eternity」という曲が1番お気に入りです。何もかもに自信がなくなって塞ぎ込んでいた時、心友や家族に沢山の愛をもらいました。絶えず変わらない優しさが身に染みて “いつもありがとう” と泣きながら弾いた曲です。YouTubeでは、アートワークを担当してくださった大島智子さんのGIF動画も楽しめます。素敵な世界観の映像と一緒に、是非聴いて頂きたいです。


Rui Fujishiro インタビュー 「映画のワンシーンのような曲を沢山作りたい」【IYOW 】

『Sentimental Days』 各配信ストア : https://linkco.re/Nzr6T3hm

 
——キャリア当初の制作環境

曲作りやアレンジで遊び始めた頃は、ただただピアノで好きなように弾いて、録音したものを携帯に送って、iPhoneに入れたアプリでビートや効果音、歌をつけたりしていました。アイドルソングっぽいものが出来ると、可愛い声の友人に歌ってもらったり。当時の曲を今聴くと、懐かしくて胸がギュッとなる傍ら、ものすごくダサく感じてしまうので、たまに笑いたい時に聴くようにしています(笑)。

 
——現在の制作環境

Logicに、88鍵のMIDIキーボードを繋げています。ドラムは内蔵音源とサンプルパックを曲によって使い分けています。

 
——メインの機材

PCはMac、DAWソフトはLogicを使用しています。まだまだ分からない事が多く、日々勉強と発見だらけです。

 
——使用音源

Logicの右も左もわからなかった頃に使っていた内蔵音源のClassical Pianoを、今でも使う機会が多いです。柔らかくて、少しレトロな音質が欲しい時に使います。

 
——ビートメイク/作曲のプロセス

最初からコードとメロディを一緒に弾いてしまう時もありますが、基本的にはコードを弾いてからメロディを加えていく事が多いです。何回か繰り返すうちに次の展開が浮かぶので、そのまま曲の終わりまで弾き切ってしまいます。尺を決めた後で、ピアノ以外の楽器やビートなどを付け加えていく場合は、最初に大まかなリズムや音色を打ち込んでから、最後に効果を加えたり、削ったり、微調整をしています。

 
——ビートメイク/作曲ポリシー

作曲をしよう!と曲作りをする事よりも、基本的に遊びや即興から曲が生まれることの方が多いです。作ろう!と気合いを入れる日ほど満足いくものが出来ないので、作曲の気分ではない日や、泣きたい日こそ、ピアノには沢山触れます。好きに弾いているうちに、その日の沈んだ気持ちも曲に出来たり。そんな日にしか生まれないフレーズが必ずある気がして。その日その日の感情を味方にして、消化しつつ、素直に音に変えていく事が、1番私には合っているなと思います。映画のワンシーンのような曲を沢山作りたいです。

 
——最も影響を受けたプロデューサー/ビートメイカー/作曲家

Ken Araiさんです。元々サウンドトラックをよく聴くのですが、『失恋ショコラティエ』というテレビドラマのオープニングである「Marble」を初めて耳にした時、全身に鳥肌が立ちました。高校生だった当時、言葉では表せないぐらいの衝撃を受け、ドラマの最中、曲が流れる度に鳥肌が止まらなかった事を今でも鮮明に覚えています。まるで1つの物語を読み進めているかのように情景が浮かび、展開ごとに変化する様々な色や表情に感情が動き、何度聴いても心を持っていかれます。メロディに恋をしているような感覚に陥ったのは初めてです。今でも、作品は必ず拝聴しております。

 
——影響を受けた楽曲

Ken Arai – Marble

シンセ、ビート、ベース、効果音の全てがツボです。耳が喜んでいる感覚になります。最初のイントロだけで5,000回は聴いたと思います。この楽曲をきっかけに、学生時代はゲームっぽい音色をシンセで沢山作っては曲に取り入れ、よく遊んでいました。

 
Ken Arai – TALK 2 ME

気合を入れたい時に必ず聴きます。シンセにハマる強めのキックとハイハットの鋭い音が好きです。

 
Ken Arai – Tomorrow

これを聴くと、嫌でも頑張った自分を労りたい気持ちになれるので、頑張った帰り道によく聞きます。可愛くて愛らしくてかっこいい。出だしのような柔らかいピアノの音色で優しく歌わせるのが好きなのは、Ken Araiさんの影響も大きいです。

 
Mrs.GREEN APPLE – Log(feat.坂口有望)

元々Mrs.GREENAPPLEさんの歌詞と声が大好きで、それをきっかけにこちらのコラボ曲を知りました。お2人の声の相性と曲調が好みです。出だしのイントロから引き込まれます。

 
Mrs. GREEN APPLE – WanteD! WanteD!(KERENMI Remix)

声や曲調は勿論ですが、トラックが大好きです。長く打楽器をやっていたので、スネアのロールやリムショット、ハイハット、シンバルなどの音色がとても心地よく、耳を傾けてしまいます。

 
半沢武志 – 23:59

出だしのピアノから大好きです。シンプルなフレーズの中に、繊細でドラマチックな動きがあって、グッと引き込まれます。サントラは、どこで聴いていても別世界に連れて行ってくれる感覚が大好きです。

 
——My favorite works / 自分の作品からのお気に入り

Rui Fujishiro – catnap

初めてのLo-Fi曲だったので、とっても思い入れのある作品です。猫ちゃんがしっぽをゆらゆらさせながら、うたた寝している所を思い浮かべながら作りました。のんびりしたい時におすすめです。

 
Rui Fujishiro – Home

ピアノインストの初リリース曲です。地元に帰省した直後に作ったので、『安心』や『落ち着く』をメロディにしたくなりました。これを聴いて、誰か1人でも心が楽になりますように。

 
zama – 夕凪(feat. 日高大地, GOMESS & Rui Fujishiro)

私のピアノと作曲を元に、zamaさんがトラックを担当。夏を感じさせる沢山の音がピアノと合わさって心地良く、それぞれの魅力溢れる詩がスッと心に入ってくる感覚が好きです。コンバスっぽい安心感のあるベースもお気に入り。どこか切なく、素直な気持ちになれます。

 
Rui Fujishiro & Hiro-a-key – Be There(Rui Fujishiro Remix)

origami PRODUCTIONさんの『origamiHomeSessions』に参加させて頂いた時の作品です。Hiro-a-keyさんの素敵な声の上で、のびのび弾かせてもらいました。すごく貴重な経験をさせて頂き、本当に感謝です。またいつかピアノ1本のRemix企画をやりたいです。

 
——Message

これからも失敗を恐れず、自分の経験や感情をメロディにしていきたいです。貴重なお時間を割いて ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございました。


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