【このリリースがすごい!】Blume popo『subliminal subject』| “名盤 × 13の異才”から生まれた至高のリミックス
音楽ファンは要チェック、注目のリリースをレビューする特集企画『このリリースがすごい!』。今回は、Blume popoのリミックスアルバム『subliminal subject』を紹介。
Blume popoのリミックスアルバム『subliminal subject』が面白い。
まず前提の共有として、今作は2025年12月にリリースされた初のフルアルバム『obscure object』のリミックスアルバムである。収録された全13曲を13組が1曲ずつリミックスしており、原盤と同じ曲順で並んでいる。実はこの『obscure object』もまた名盤で、どの楽曲もこだわり抜いたスキのないアレンジをしている。バンドサウンドを軸にしながらも、ひとつのジャンルに囚われない自由なアレンジを披露しているのだ。最初の楽曲である「in your mind」を聴いただけでも、そのこだわりを痛感する。
言ってしまえば、「わざわざ手を加えなくても完成していた」作品だったわけだ。そんな作品でありながら、大胆にリミックス盤としてリリースしたということが今作の面白さにも繋がる。一方、『subliminal subject』でアレンジを手掛けたメンバーも錚々たる並びで、知る人は知っている変化球全振りのメンバーになっている。MON/KU、safmusic、Mizore、KBSNK、Tomggg、Acidclank、WOZNIAK、ウ山あまね、ผ้าอ้อม 99999、gaburyu、aryy、Cwondo、khc。W杯の日本代表のような、アーティストの名前を見ただけで「こりゃあもうおもろいアレンジをしてくれるに違いない」という期待値爆上がりのラインナップなのだ。
まず1曲目の「in your mind」。原曲は、電気的ノイズをサンプリングしているような音像が下地にあって、パーカッシブな素材としてビートの骨格に据えた“通”なアレンジを展開する。MON/KUは、そんなアレンジだった楽曲を自分の得意分野であるDAW的な切り口に組み替えていき、ノイズとインダストリアルを交差させたダークな音像に落とし込んでいく。別種のビートをレイヤーし、要所にブレイクを挿入し、各パートの接続を組み替えて再構築することで、「in your mind」の世界に更なる美学を創出する。
4曲目の「よく眠れるように」の原曲は、柔らかなボーカル、残響を長く引くギター、軽快なリズム・セクションが交差して軽やかなグルーヴを生む。ところが1分40秒付近で、強く歪ませたギターが一瞬だけ前景化し、音色とダイナミクスを急変させる。この予想のつかない瞬間的なピークが、この楽曲の面白さを際立たせている。KBSNK版は、原曲のボーカルトラックを基層に異質な音色のビートトラックを差し込み、意外な音同士が噛み合うたびに音像の輪郭が更新されていく面白さがある。終盤ではビートの比重が増して、ダンス・トラックのグルーヴへ接続する展開も素晴らしくて、原曲の叙情を残しながら、音響的な運動量を段階的に引き上げる感じが絶妙だ。
8曲目の「二月」も印象的だ。原曲は、静謐なバンドアンサンブルを軸に、セクションごとのダイナミクスを拡張していくような楽曲になっている。静と動の振幅そのものがドラマを形成するような揺らぎを感じさせる楽曲だ。一方、ウ山あまね版でまず耳を奪うのは、ボーカル・プロセッシングである。声の輪郭を滑らかに均し、歌声は言葉を運ぶ前景の主体であると同時に、トラックを構成する音響素材としても聴かせる。その均質で人工的なテクスチャーが、原曲にはない味わいを生み出していて、聴いていて楽しい。
9曲目の「23」では、原曲のしっとりとしたアコースティックな質感を、ผ้าอ้อม 99999が大胆に解体する。ボーカル素材を細かくスライスし、ボーカル・チョップとしてリズミックに再配置。さらに断片をレイヤーし直すことで、歌声はメロディーを担う前景の存在から、メロディーとリズムの双方を形成する素材へ役割を変える印象を与える。グリッチを思わせる細かなエディットによって音の連続性が寸断され、原曲の親密な静けさが、次の挙動を予測できないスリルへと反転している。
ほかにも、2曲目「遠い国」のsafmusic版は、原曲を支えていた反復的なアルペジオを細かく切り分け、音の隙間までリズムとして機能させる。5曲目「ふわふわ」のTomggg版は、音色の変化によって展開していく原曲の発想を、きらめく電子音と弾むビートでさらにカラフルに押し広げる。そして13曲目「あなたおやすみ」のkhc版は、子守唄のような原曲の優しさをノイズと電子音の揺らぎのなかへ引き伸ばし、安らぎと不穏さが同居する余韻を残して本作を閉じる。
原曲と聴き比べるのも面白いし、今作だけ聴いても高揚感のある音楽体験ができるのが素晴らしいところ。マジで、こんなに興奮したリアレンジのアルバム、初めてではないだろうか。それはBlume popoが素晴らしい楽曲を作ってきたこと、リアレンジを手掛けた13組が作家性をいかんなく発揮しながら妥協なく楽曲を作ってきたこと、その2つが組み合わさったことで生まれたものであるように感じる。

Blume popo
リミックス・アルバム『subliminal subject』
2026年8月5日配信リリース
音楽ストリーミングサービス各リンク https://linkco.re/xE776cds