【このリリースがすごい!】Dream Echoes『memorial』| 五感とともに焼き付く、新しい懐かしさ

コラム・特集
2026.7.31
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音楽ファンは要チェック、注目のリリースをレビューする特集企画『このリリースがすごい!』。今回は、Dream EchoesのEP『memorial』を紹介。


2026年、7月。ローカットされたサウンドの隙間を潜り抜けて、イヤホンの外で鳴く蝉の声が耳に滑り込むと、録音された音源とそこに漂っている空気の境界線はもはやなくなってしまう。Dream EchoesのEP『memorial』は、きっとそのようにして、この夏の匂いや肌触りとともに僕の脳みそのどこかに居座り続けるのだろう。音楽はいつも、過ぎ去った季節を文字通り再生するリマインダーでもある。

未だ謎の多いバンドだ。横浜出身の5人組、2025年の4月から断続的にライブを行なっているようで、本作がデビュー作。まあ、もしかするとそれ以上の情報は不要なのかもしれない。本作の主役となるのは、具体性を欠いているのにどこか身に覚えがある言葉によってくすぐられた聴き手それぞれのノスタルジーそのもので、彼ら自身、M3「Time waits no one」では某映像作品のセリフをサンプリングすることで、音を背景化させている(本作のテーマの一つに時の隔たりがあることを引用によって示唆しながら)。その手法は、目的こそ異なるかもしれないが、宅録シューゲイズの教典的名盤であるParannoul『To See the Next Part of the Dream』を想起させる。

その他にも、シューゲイズをはじめとする様々な先達からの影響を感じ取ることができる。男女(に聴こえる)ツインボーカルが印象的なM2「In mood」の、短いセンテンスに高濃度の祈りを凝縮し反復の中で解き放っていくさまには、ベッドルームシューゲイズアクト・kuragariが重なる。タイトル曲であるM4「memorial」のイントロのうねりと揺らぎ、甘いコーラスなんかはわかりやすくMy Bloody Valentineだろう。だけど、その後にシケたツラを蹴飛ばすような勢いで割り込んでくるボーカルとメロディが、どことなくリアム・ギャラガーっぽくて面白い。

それなのにどうしても浮かぶ景色は日本的で、M5「angel tune」は、「虫の鳴き声」「花火」「ラムネ」「門限」といったモチーフも相まって、もはやJ-POP的な親しみやすさすら放っている。とにかく、あらゆる取り合わせのセンスと、普遍性を持ったメロディと言葉に貫かれた、新しい懐かしさに満ちた一枚。



Dream Echoes『memorial』

Dream Echoes『memorial』各サブスク

Dream Echoes『memorial』歌詞

 
 

この記事の執筆者
サイトウマサヒロ
1995年生まれ、フリーのライター。インタビュー、ライブレポート、コラムなど書きます。