【Who’s NXT】ZIW |「“自分がやる意味”のある音楽表現を」チルなサウンドと巧みなフロウで注目の新鋭ラッパー

2020.2.1


ZIW インタビュー |「“自分がやる意味”のある音楽表現を」チルなサウンドと巧みなフロウで注目の新鋭ラッパー【Who's NXT】

ZIW

1996年7月20日生まれの23歳。大阪でキャリアを積み2019年9月に上京。現在東京を拠点に活動する新鋭ラッパー。

14歳の時にラップミュージックから影響を受けラップのキャリアをスタート。2019年4月にFLEURを客演に迎えた1stシングル「fallin’」をリリースした後、巧みなフロウを駆使しチルに落とし込んだスキルフルな1st EP『AM3:00』を2019年11月にリリース。同作の収録曲は様々なプレイリストに選出される他、TuneCore Japanのプレイリストやデイリーpick upに選ばれるなど着々と注目を集めている。

Who’s NXT : A series of interviews with featured artists


——最初にZIWさんが音楽に興味を持ったきっかけを教えてください。

完全に母親の影響ですね。母親がUSの’00〜のR&Bが好きで、物心ついた時には家でも車でもそういう音楽が流れてました。元々色んなジャンルの曲を聴いてたんですが、僕が中学に上がる前くらいに韓国のラップミュージックがよく流れてて、適当に口ずさんでたら滅多に褒めない母親が滅茶苦茶褒めてくれて。きっかけはそこですね。普段本当に褒めてくれないんですよ(笑)。最初は歌を歌いたかったんですけど、そこには全くノータッチで(笑)。だから褒められることに飢えてた分、余計に「これだ!」ってなってラップにのめり込むようになりました。

今では制作にあたってメロディーや歌モノも作ってるんですが、子供の頃に培った感覚や匂いとか色味ってけっこう根強い感性になってるなぁって思いますね。自分自身今に至るまでかなり遠回りしたなと思うんですけど、ルーツとしては良かったかなと最近思えるようになりました。今でもそういう「感じとる部分」や「感じ方」は無くさないように、子供っぽく純粋に感じとったモノを音楽に落とし込むようにしています。


ZIW インタビュー |「“自分がやる意味”のある音楽表現を」チルなサウンドと巧みなフロウで注目の新鋭ラッパー【Who’s NXT】

 
——そのようにラップにのめり込んだ後、どういう経緯で本格的にラッパーとして活動をするようになりましたか?

完全にラッパーとして活動し始めたのは今から3年ほど前です。今自分のバックDJをしてくれてるてんばとの出会いが全てのきっかけになりました。それまでは本当に無知で適当だった自分を一蹴してくれた関係者の大人がいて、それで立ち直れないくらい本気で沈んでたんですけど、そういう時にずっと答えをくれようと色んな現場に連れてってくれたり知らない世界にハマらせてくれた張本人がてんばで、てんばとその人がいなかったら今の自分は間違いなくいないです。それからやりたいことが明確に見えてきたし、少しずつ状況もよくなってきました。


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DJてんば (ヒラタアキヒロ)

てんば無しじゃ俺は語れないし、俺無しでもあいつのことは語れない。生涯の相棒だと思うし、逆に俺じゃないとあいつは扱えない(笑)。綺麗事じゃなくて信じ合える仲間に出会えたことが音楽を続けられた原動力だと思うし、もっとゾクゾクしたいし、これからもあいつらと音楽がしたいって気持ちがずっとやり続けたい理由だと思います。


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ZIW インタビュー |「“自分がやる意味”のある音楽表現を」チルなサウンドと巧みなフロウで注目の新鋭ラッパー【Who's NXT】

 
——てんばさんとは最初どういうつながりで出会ったんですか?

てんばとの繋がりは、組んでたクルーでDJを探しててメンバーが連れてきたのがきっかけだったんですけど、ファーストインパクトがすごくて。最初多分お互い苦手な人種だったんですけど、普通なら言いにくいこととかも人の顔色伺わずズバズバ言うんですよ。でもそれが、傷つけるためとかじゃなくてそいつの為に言ってたりとか。ちゃんとした意図があるし。基本嫌われるのが嫌とかしょーもない理由で友達にも言わないようなやつばっかりで、逆にいない。こいつかっこいいな、表現下手だけどちゃんと自分なりに大事にしてるんだなーって。それからっすね。色んな話するようになって。

自分は音楽仲間って仕事仲間じゃなくて、家族に近い関係じゃないと一緒にやれないと思ってるんですけど、今ではおれらの関係の延長線上に音楽がある感じ。だから上京してからもしょーもない話があっても電話するし、いい話が決まった時も一緒に喜んでくれるし、あいつがバックについてくれるライブが一番楽しい。早く東京来ないかなと思ってます。

 
——今おっしゃったようにZIWさんは昨年、拠点を東京に移したそうですね。

そうですね、だから今は東京と大阪をメインに活動してるんですけど、各地方、例えば沖縄や福岡、大分、北海道とか関西の他の地域からも「来て欲しい」っていうメッセージがたくさん届いていて。なので全国のオーガナイザーさん、ぜひよろしくお願いします(笑)。

 
——やはりそこには昨年リリースされた1st EPの影響も大きいかと思われるのですが、改めて作品の紹介と聴きどころを教えていただけますか?

1st EPの『AM3:00』は、1日の時間の流れをコンセプトに時間の流れで変わる人間らしい感情の起伏を書いた作品になっています。


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『AM3:00』 各配信ストア : https://linkco.re/XZvbaP69

1曲目の「AM3:00」は、この曲が出来たことでEPのテーマが決まったんですけど、“今の自分じゃまだ足りない辿り着けない。悔しいけど事実。口では言えても伴ってない”という自分が立ったステージで思ったことをそのまま書きました。戒めのつもりで。自分の中ですごくいいアウトプットをしたなと思うし、“目覚め”ることも大事だったのでアラームをかけることで“目覚まし”にしています。でも目が覚めても現実世界じゃ結局2曲目の「gray」みたいな人間で、“てーげー”なんすよ。そこで初めて後悔に気づいて、3曲目の「TEGE」につながります。てーげーって方言で“適当”って意味なんですけど、あえて昔の自分がやってたような自分にとって初心に戻るための曲になっています。“自分に言い聞かすbe alright 自分がやりたいことやる” 。

そして、次曲の「fallin’ feat FLEUR」は初めてやりたいことを形として出せた曲。巻き戻るって意味で、このセット順にしました。「fallin’ feat FLEUR」はシングルでも配信してるんですけど、自分がすごくお世話になってる先輩でもあるFLEUR君に客演してもらいました。この曲が今自分の身の回りに起こってる現実の引き金になったし、自分でも大好きな曲です。この曲はFLEUR君が描いたテーマに沿って16小節ラップしてるんですけど、1バース目の“意気地なし”からインスピレーションを受けたというか、“あぁなんか今の自分だなぁ”って感じて本当にすぐリリックが出来たんですけど、言いたいことをちゃんと俺らしく集約できたので自分の中では一番好きなバースです。


ZIW インタビュー |「“自分がやる意味”のある音楽表現を」チルなサウンドと巧みなフロウで注目の新鋭ラッパー【Who's NXT】
FLEUR(右)

そして、「寝言 feat.kojikoji」は、「愛のままに」のカバーで知ったこじちゃんから朝起きたらフォロー返ってきてて、何事かと思ったらどうやら最初のシングルの「fallin’」を聴いてくれたみたいで。しかもそのタイミングで働いてた古着屋で接客して盛り上がって仲良くなったお客さんが偶然にもこじちゃんを客演にも迎えてるlo-key design のmarsh willowで。そういう繋がりで客演してもらえることになりました。marshとも今ではマイメンになれたし、一番お世話になってたFLEUR君から繋がって公私共にやってきたことが明日に繋がることになって、シンクロニシティーを感じました(笑)。そんなこともあって「寝言」は「fallin’」の続きを描いてます。単曲で聴くと意味が分からないリリックもピースを合わせると見え方、聴こえ方も変わると思います。「寝言」はこのEPの中でも特にキャッチーに作ったんですけど、それだけじゃ自分的に面白みに欠けてるなと感じたんで、こじちゃんのバースのリリックをこじちゃんがあげてるカバー動画の中から意味が繋がるようリリックを組み立てて作りました。これは絶対誰も気付いてないと思いますけど(笑)。


ZIW インタビュー |「“自分がやる意味”のある音楽表現を」チルなサウンドと巧みなフロウで注目の新鋭ラッパー【Who's NXT】

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——そのようにそれぞれの楽曲に濃く意味や内容が込められていますが、ZIWさんはそういった楽曲をどのようなプロセスで作られていますか

大体はトラックが届いてから作り始めるんですが、宇宙語でプリプロを録ったり、リリック先行でフロウ作ったり、その曲その曲でしっくりくるやり方でやってます。環境としては、基本的には自宅で作業します。いい空間でやる作業の方が効率が上がる気がするんですよね。だから部屋のインテリア、照明なんかも制作のやりやすい雰囲気にフォーカスしてるんです。上京してきて物件を選ぶ時もそういう部分を重視したので、今は家が一番落ち着いて作業できます。テレビとかゲームとか邪魔になりそうなものは何も置いてなくて。友達とか遊びに来たら退屈そうですけど(笑)。

あと、自分自身で制作した楽曲にOKを出す基準の根本にリリックとリズムがあって。あとはリアルさだったり、自分が本当に書きたいことなのかとか、このトラックにあった乗せ方なのかといった部分を大事にしています。


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——ZIWさんはどういったアーティストや楽曲に影響を受けましたか?

ZIN – The longer

これほどに音楽に助けられたと思う曲にはまだ出会ってないです。正直自分はまだ浅いし、届かない場所が多いけど、人間一人の一生じゃ到底追いつかない膨大な音楽の歴史の壁に当たった時にすごくちっぽけな自分に絶望したことがあって。そんな時に、歯がゆかった自分に唯一味方してくれたというか、暖かかった曲です。美しかった。

 
神門 – エール

一度聴けばわかります。こんなにストレートに胸が抉られる曲に出会えたことが自分にとって財産だなと。

 
Kendrick Lamar – King Kunta & alright

Kendrick Lamar – Alright

当時、さっきも言いましたがてんばと出会って曲を沢山教えてもらってたんですけど、それと同時進行でリズム、フローをレパートリーとして持ちたくて楽器をやってる友人に授業形式で教えてもらってたことがあって、議題に上がったケンドリックの「DNA」を聴いた時にため息が出るくらいフローのかっこよさに食らって。それから夢中で色々聴いていく中で『To pimp a butterfly』に出会いました。jazz、funk、soul、ブラックミュージックの素晴らしさもそうだし、当時のUSに降りかかってる問題に対してのメッセージ性だったり、とにかく感動したっすね。

 
——音楽活動をするにあたって、何か特に意識していることはありますか?

そこは“自分がやる意味”だと思います。正直な所、俺はまだまだ出来上がってないし、俺じゃなくてもできることをやってる部分が少なからずあると思ってますが、結局自分の言葉や表現ってオリジナルだと思うんで、いかに噛み砕いていった言葉なのか、何を経験して出た言葉なのかが大事なんじゃないかと思ってます。

“自分のこだわり”を強く持つことでオリジナルがどんどん自分になってくるし、他人に真似できないスキルになると思うんです。それで言葉の重みも変わってくるし、俺が歌う意味になると思うので、年月かけて培われていくであろう感性を大事にしたいです。

だから、そういう意味では全く焦ってなくて、やりたいことやり続けるだけかなと。自分の中ではもう少し経った後の自分には期待してます(笑)。


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——今後の予定を教えてください。

先日告知させてもらいましたが、自分のEPから「寝言」と「fallin’」のバイナル化が決定しました。3月25日より全国のdisk union、TOWER RECORDSなどに展開される予定です!ぜひ手にとってもらえれば嬉しいです!

そして2月2日に2nd single「22」を各配信サイトより配信します。cilly sourceのビートメーカー・ニューリーがビートメイクしてくれた作品です。こちらもぜひ聴いていただきたいです。


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「22」 各配信ストア : https://linkco.re/hRDP2YNC

 
——最後にメッセージをお願いします。

インタビューを最後まで見てくれてありがとうございました!!

今年は色々仕掛けます。何卒よろしくお願いします。

 

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