【このリリースがすごい!】揺らいで凪『Lumen』 | 揺らぎと凪の狭間で示す、望郷の照らし方
音楽ファンは要チェック、注目のリリースをレビューする特集企画『このリリースがすごい!』。今回は、揺らいで凪のEP『Lumen』を紹介。
揺らいで凪。ただ穏やかに凪ぐだけでも、行き場のない激しい感情をぶつけるでもない。揺らぐことを受け入れながら、それをいつか静けさの中で振り返ることができたなら。とても良いバンド名だと思う。
2021年1月1日に結成され、「待ち合わせは、日々の静けに」を合言葉として、神戸を中心に活動している3人組。3rd EPにしてこれまでで最大ボリュームとなる4曲入り音源の本作では、「揺らぎ」と「凪」の間にある景色を、アレンジメントの拡張と歌唱表現の洗練によって、よりきめ細かく、ダイナミックに描くことに成功した。
全曲で作詞を手がける七華貴笑(Gt,Vo)の歌声は、自身の思いを遠くに届けるというよりも、むしろ言葉の温度を手放さず握り締めるように、確かな芯を持ちながら響いている。その引力に自然と惹き込まれることを考えれば、揺らいで凪は紛れもない歌モノのロックバンドと言えるだろう。
一方で彼女の存在感と並んでバンドの「らしさ」を高めているのは、詞世界を彩り、歌の感情表出を後押しするサウンドの精度に他ならない。ラストトラック「海底」のエンディングが1分超(あるいはフェードアウトのその先でそれ以上)にわたるギターソロで締め括られることからしても、楽器が声と同じくらいものを語るということに、彼らは自覚的なはずだ。
金岡竜丸(Gt,Cho) のプレイは実に表情豊か。オープニングトラック「ルミナスの行方」では、ディレイとリバーブの深度がそのまま楽曲全体の視界の広さをコントロールする。続く「pale light」では、思わず口ずさみたくなるようなギターリフを通奏することで、挿入されるエフェクティブなギミックや静寂パートの鮮烈さを際立たせている。
つまり、七華のボーカリストとしての求心力とバンドのボキャブラリーがどちらかを引き立て役とすることなく手を取り合うことで、個人的な歌が閉ざされた表現になっていないことが彼らの大きな魅力なのだ。過去との決別とその後に残るものの行方を綴った「-arium」がボーカルの掛け合いを経て大合唱に至るのは、揺らいで凪というバンドらしい望郷の照らし方なのだと感じる。
